家族鬱病体験記
    家族が見た息子のうつ病治療と治った記録


家族うつ病回復体験 岩波英知先生の治療体験記

このうつ病に関する体験談は長男のうつ病とその家族の治療の闘いの記録です。
鬱病の家族を抱える人たち、何よりも鬱病で苦しんでいる当人に送ります。
鬱病患者への接し方・対応の経験も書いています
うつ病は家族まで巻き込みます。
その時、家族は接し方に悩みます。
私たちの経験が生かされますように 。


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プロローグ

うつ病に関する息子との対話

私の息子が鬱病に陥りました。まだ働き盛りでこれから伸びていくであろう20代の末にです。
それまでも気分の波はありましたが、ある時、鬱病治療中で効果が上がらず苦労していたとき、息子が私に言いました。
この言葉は忘れられません。それはこんな内容でした

「自分は鬱病で働くこともできないで、家族に迷惑ばかりかけている。金銭的にも申し訳ないと思っているし、こんな自分が情けない。
今まで育ててくれて、いっぱい自分に投資してくれて期待もかけてくれたけれど、なんでこんな風になったのかわからない。
でも鬱病が好転しないし、もうこれ以上迷惑かけるなら、いっそのこと(自殺も)考えるけど、でもどうにか元気になりたい。
はやく治って元気になって、今まで苦労をかけて分取り戻したい。家族にもう迷惑をかけるのも嫌だし、早く何とかしたい。
金銭的にもはやく逆にこっちが楽をさせてやりたいと思ってる。自分もプライドがあるし、 このまま終わるのは絶対嫌だ。
今まで積み重ねてきたものとか能力みたいなものがあるから、それを発揮したい。
だけど、今のままじゃきついし先が見えないし、いつまでも迷惑かけて、ごめんなさいとしか言えない。
いつ見捨てられるかビクビクしている。そうじゃなくても、家族のお荷物になっているのはわかるから、そう考えると死にたくなる
気力が出ないし、甘くて、根性がない自分が情けない。期待に応えられなくてすみません」

要約するとこんな話しでした。かつて理路整然と話すことができていた息子が精一杯にまとまらない頭で必死に伝えてくれました。
この話を聞いて、鬱病の本質というか怖さがわかった気がした。当人は必死で努力しているのに、逆に落ち込んでしまう。
頑張れる人がなる心の病気だということが知識で知っていたが、初めて身に染みてわかった瞬間だった。だから頑張れと言ってはいけないのだと。
こう打ち明けてくれたことに対して、勇気あることだと思う。恥もプライドをも捨てて言ってくれたのだから。
うつ病は家族ですらその苦しみをわかってあげられない。知識がないと、もっと気張れ、頑張ればいい、きついのは誰だって同じだと思ってしまう。
しかし、本人は120パーセントの努力をしても、全力で打ち込んでも、結果はあの言葉になっている。
本気で親として息子を助けたい、何とかしてやりたい、私の命と交換していいと思った。

私は息子の精一杯の告白にこんな風に言ったと思う。
「無理に頑張る必要はない。金銭的なこととかひきこもりのこととか考えるな。親子なんだからお互い迷惑をかけるのは当たり前。
いつもどうにか元気になってもらいたいと思ってるけれど、知らず知らずプレッシャーをかけていたらすまない。
お前がうつ病になって迷惑なんて考えたことはない。もう早く元気になれとか、根性の問題とか言わない。
こちらのプレッシャーが逆におまえを追いつめていたことがわかった。いまの治療で効果が感じられないなら、もっと別のところを探してやるから。
苦しいことがあったら何でも言ってくれ。人生は長いんだから、ゆっくり治していけばいい。お前の父親でよかったと思っている」

息子は息子なりにいろいろな道を模索していたらしい。
しかし貯金もなくなっていて、働くこともできない状態で、これ以上家族に迷惑をかけてはいけない、でも何とかしなくてはいけない狭間で苦しんでいたらしい。
「いいところがありそうなんだけど。鬱病が治った人が多くて、褒めている人も多かったし。でも、こっちは働けないし、またお金の迷惑をかけてしまう」
「いいところならどんどん通えばいい。いつかいいところに出会うよ。それまではじっくり焦らずにゆっくりしたらいい。今まで頑張りすぎたんだ」
幸い、息子が探してきたところが非常にいいところで、息子が鬱病から信じられない程回復し、元気になっていった。
今はもう社会の第一線に復帰することができたわけだが、偶然にも私が紹介を受けていた岩波先生のプログラムと同じだった。
私はその決定を保留していた。
家族としては一番本人が自発的にやりたいと思ったことを尊重すべきだと思った。
うつ病になると何にもやる気にならず、ただ苦しさから抜け出したい気持だけがある。かといって、行動することも億劫になっている。
そんな息子が自発的な意志を持ってくれたことは、大きな希望を感じた。

息子が一生立ち直れないと言うより、私は絶望のあまり、もしくは衝動的な自殺が一番怖かった。
一度自殺についてじっくり話したことがある。自殺はあんまり踏み込めない話題だけに避けてきたが、思い切って話題にして良かったと思う。
当人も話した少しホッとしたと後に告げた。

「鬱病は自殺したいとなるが、おまえはどうなんだ?」
「きついし、いつまでたっても元気になれないし、自分が情けなくなるから……」
「思ったことあるのか?」
「ある」
「どんなときに?」
「いつも」

いつも死にたい、死にたいと考えているという。きっかけがあれば、いつでもできるそうだ。これを聞いてゾッとなった。
「絶対自殺だけはしないでくれ。おまえの問題じゃなくて家族みんな悲しむんだ。お母さんもこれ以上哀しませないでくれ」
私はまた息子にプレッシャーをかけてしまったと思ったが、本心でもあった。
「死ねないのは、やっぱり家族がいるから。もし家族がいなかったら、鬱病の人はみんな(自殺を)やってると思う」
「家族のことを思うと死にたくても死ねない」

私たち家族の存在が息子が自殺に踏み切れない一番、いいや唯一の理由だそうだ。
複雑だった。嬉しいのか悲しいのかわからなくなった。
自殺についてこれ以上話し合ったことはないし、今は息子から自殺願望はすっかり消え失せている。
当時は由々しき大問題だった。
死んで楽になりたいほど苦しいのがうつ病だということ。それぐらい本人は苦しい。
自殺するのが一番の解決法である病気は心も肉体の疾患を含めて、他に何があるだろうか?
ほとんどないだろう。うつ病のきつさはそれほど重大事なのだ。
社長室にいて、電話が鳴ったとき「びくっ」となった(特に家から電話があったとき)
私はちょっとした電話恐怖症にかかってしまった。
家族がいるから自殺しないと言うが、その家族がプレッシャーになっているという(いい年して養われる申し訳なさなどから)。
本人が私たちが迷惑に感じていると本気で誤解して信じてしまったら、死ぬことが家族のためになるという動機で自殺を図る恐れがある。
家族の接し方一つで、簡単に運命はどちらかに転んでしまう。
どちらにしても、地獄だ。これがうつ病なのか。
本人も家族もこんなに大変なことはないだろう。
しかし、私たち家族が大変という素振りを見せてはいけない。

うつ病に対して正直な話

ここで正直に打ち明けたいことがあります
息子の鬱病を私たちがどうとらえていたかということです。
『根性なし、甘い、逃避、怠け者』といったもので、鬱病をよく知らない人は、そう思ってしまうものです。
働かず(働けずとは考えていなかった)に家にいて、引きこもり生活を続けている息子に対してどう思っていたか
息子には迷惑だと考えていないと言ったが、実は迷惑というか厄介には思っていました。
もちろん愛情を持っているからこそ、もっと頑張ってくれと、お前はそこで終わる人間じゃないだろうと。
根性なしとか息子を思っていたら、当然そう思うのはしょうがないにしても、そこにも鬱病の怖さがあります。
早く立ち直れと思っていたし、誰だって苦労するものだ、乗り越えなければならない問題だと考えていた。
無言のプレッシャーが息子に伝わっていたのは想像するにかたくない。

じゃあ、プレッシャーを与えないとどうなるか。
ずっと一生このままの生活を続けてしまうかもしれないという不安が私たちにありました。
当人は鬱病から脱したいと思っていても、できないから引き籠もるしかなかったのです。
家族も当人も行き場がなくなる。
薬を飲んだだけでは決して解決しないし、治療を難治化させるだけでした。
何はともあれ、破格の先生に巡り会えて鬱病が克服できたことはつくづく幸せでした。
うつ病は家族がやる気になっても本人がやる気にならないとどうしようもない。
本人がやる気になっても、働いていない人が多いため、家族の金銭的な負担が問題になる。
結局効果的なうつ病治療を受けられず、ずるずるとうつ病が重くなるのを食い止められない。
家族もうつ病患者に対して、理解がない場合が多く、私が感じたのと同じことを思っているから、ますます当人は孤立無援になり落ち込む。
だからこそ、当人も私たちも鬱病克服のために一致団結して事に当たれたのは幸せだったと思います。
(ただし家族のやる気が本人への負担になることもあります。何にでもマイナス思考を持ってしまいますから。バランスが大切でした)
この体験記がうつ病の理解をより深める手助けとなるように。
うつ病患者じゃない私が書くことはそういう意義があると勝手に思っています。
家族がうつ病に対してあわてふためくよりは、難しいことを考えず、どしっと構えていればいいと思います。
そして、本人が自発的な意志を持った時、サポートをするのが一番でした。
とはいえ、家族のうつ病に対する接し方に決して正解はありません。それぞれ一番の決着どころを探さなくてはいけないと思います
お互い胸襟を開いて接すること、普通に接することは大切だったように感じます。

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